第3話 若い使徒
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Right now Light !
まさに今、光が!
第3話
若い 使徒
Young apostle
目が見える、ということは、
どれほど価値ある尊いことだろう。
あれから しばらくして、
またもや 同じように私は
夢の中で あの刑務所の中に
いつの間にか 戻って来ていた。
祈りの中で 主の臨在に撃たれ
心は激しく 強められたが、
また再び この刑務所に戻り
果てしない 探索を続ける。
だが今回は 一人ぼっちではなく、
打ち解けて 話し合える相手がいる。
若い 黒人青年の友が出来たのだ。
「私たちは究極の視力を与えられる。
もし本当にその力を獲得出来れば、
それまでの古い見方や考え方でなく
人の内面を見ることが出来るんだよ」
私の話す言葉を 確かな面持ちで真剣に
耳を 傾けてくれており、そのあまりの
素直さや偏見のなさに とても感動する。
彼とほぼ同じ年齢であろう あの教師と
何という違いかと つくづく思ったが、
あまり気にせずに おくことにした。
同じ穴のムジナには なりたくないから。
この若者なら 本物の教師になるだろう。
言葉を続けながら 私はそう考えていた。
「もしそうなれば 肌の色や性別とか
年齢なんかで 人を判断しなくなる。
外見や肩書きや 名声とかじゃなくて、
霊によって 人を判断できるからだよ」
刑務所の中にいる人や 監視官が、もし
こんな話を 聞いた日には、飛び上がって
驚き、銃を持って 追っかけ回されるかも
と思ったが、今は冷静に 語るだけだ。
青年は、威儀を正しつつも心は興奮し、
ワクワクしている感じの顔だったが、
一つ一つを記憶の中から確認する様に
冷静さを取り戻して慎重に語り始めた。
「同じようなことを、教師たちも
よく私たちに言っていました!!」
青年は、本心から驚いている様子だった。
「それでも、そこには違いがあるよ」
と、私はその真面目な青年に言った。
これは本当に大切なことであるが、
自分を正当化するあまり相手を卑下
しすぎることもあまり良くない。
それでもやはり、事実は事実として
本当のことを伝える必要もある。
「私たちが全員 似た者同士だという
考え方を 植え付けようとしてるんだ」
それはまるで 洗脳しようとするみたいに。
言葉の表現に注意しながら 話を続ける。
「そもそも、私たちは、理由があって、
お互いに異なる者として造られている」
肌の色や年齢、性別、境遇も経験も違う。
日本に生まれようと外国だろうと結局は、
自民族のアイデンティティを保つために
努力しようとしても空回りする人が多い。
「真の平和は、私たちがそれぞれ違いを
持った存在としてお互い尊重し合う時に
初めて到来するものだからなんだよ!」
真昼から少し過ぎ、もう昼下がりだが、
夕暮れ時に近づいているのにまだ明るい。
天気が良いことで心まで晴れやかになる。
「自分がどういう者であるか 本当に
わかってくると 自分と違う人に対して
脅威を感じることも なくなってくる」
もともと人に恐れを抱くのはいけない。
イメージがあるから仕方ないとしても、
偏見を固守することは無駄の極みだろう。
「自分をよく理解することが出来れば、
そこにはもう、恐怖心がなくなるんだ」
「恐れが なくなるためには、
自分を 知ることが 必要なんですか」
青年は、一つ一つの言葉を大切に
かみしめるように口に出して話す。
「そうだね。自分の敵は自分自身。
闘う相手は他の誰でもないんだから」
「それもよく言われてきました。
自由になるために自分を越えろと」
あるあるすぎる精神論だが、そこには
根本的に欠如してるものも沢山ある。
個人を突き放して 自分は責任を負わず
全体の正義をふりかざすなど 愚物だ。
「もし私たちが本当に 解放されてたら、
自分たちと違う人に対して 敬意を払い、
配慮もできる。むしろ かえってお互い
いつも感謝して学び合おうとさえする」
「ちょうど、今、この時、
きみと私が、真実を求めて
こうやって話しているようにね」
純粋な瞳で見つめる先には、私でなく、
真の知恵と光があると 彼には見えている。
「もし人が、自分と違う人からでも
学ぼうとして心を開けば、いつでも
私たちの視力は強化されるんだ」
「学ぶために、心を開いたら…」
「ますます見えるようになるんだよ」
「それは、心の視力のことですね」
「うん、まあ、そういうことだ」
「自分に与えられているものの中で、
目が見えるということこそが もっとも
価値があるということを、心に留めて
おかなければならない。毎日、視力を
強化するのに役立つことをしなければ、
意味は全くないと言ってもいい」
「私たちの視力を失わせるような、人や
ものを避けるようにしないとダメですね」
「その通り。分かってきたみたいだね」
「わかりました。気分が落ち込んだり
逃げ出したくなるほど暗くなることは、
まさしくそういうことなんですね!」
「( That's exactly right!)
まさにその通りだよ!
落ち込むと、たいていの場合、
視力が失われ始めるんだからね」
と私は言った。
「目的を達成するためには、
たとえどんな形であっても、
落ち込んだり、失望したり、
恐れてはならないんですね!
落ち込むことによって、心の
目が見えなくなるんですね!」
彼には最初、純粋な熱心さはあったが
微笑みだとか明るさには欠けていた。
しかし、話をして一つひとつ理解して
いくうちに、微笑みと明るさが宿った。
「自分の目的を知るということこそ、
視力を強化するためには 最も有効な
手段の一つなんだ。さらに それは、
失望して 視力を失うようなことを
避けるためにも、とても有効な手だ」
青年は、非常に大きな衝撃を受けた様な
驚いた表情になっている。だがそこには、
険しさよりも 希望の光が見て取れる。
彼は今、大きく成長しつつある。
「全ての場所で真実だと言える、
ある一つの大切な原則があるんだ。
きみは生涯に渡って、その原則を
覚えていなければならないだろう」
「それは何でしょうか?」
「人は、神の作った天の原則に
逆らわなければ 必ず幸せになれる。
もちろんそれは、今までも聞いた
ことがあることだろう。だけどね、
天来の愛と知恵を持っていなければ、
人間の情愛や知識なんて役に立たない。
愛も知恵も、本来 人間の持ち物でなく
神様から預かって 有効利用するものだ。
だから、いくらどんなに愛とか知恵で
人が貴重な言葉を話したとしても、
聞く人が真理に対して心を開かず、
愛を感じなければ何の意味もない。
真理は、自己否定を要求するもの。
だけど、偽物の真理は、依存と隷属。
本当に、真実の光を得たいのであれば、
肉の性質が強かったり、富んだ人ほど
難しいと感じるし、決断を先延ばしに
してしまうもの。自分が可愛いから。
けれどそんなに 生ぬるく甘えてたら、
真理に対しても、不平や不満だとか
疑いが出てきてしまうものなんだよ。
愛するということは、自分以上に
相手を大切に思うことだろう?
それをいつまでも 時間を浪費して
考え込んだり 迷ったりするなんて
愚かさ というより 極悪さ だよね。
真実の光に照らされて、無限の愛に
生きるようにすれば、不平も消える。
恐れも、迷いも、疑いも、なくなる。
今すぐに、そこまでの要求はされない
としても、天の御国の福音を提示する
エバンジェリスト、伝道者クラスなら、
み言葉を伝えるために命も惜しまない。
だって、光が見えているから。真実が
どこで何をしてるかも 全て分かるから。
命を簡単にかけたり捨てたりする
極悪カルトな依存性隷属犯罪者も
世界中にもゴマンといるだろうが、
真実の知恵は 愛をもって人を見る。
人間は強くなくちゃダメだし、
優しくなきゃ人間の価値無いって
なんかどっかで聞いたことあるが、
愛も知恵も 両方とも大切だ。
しかもそれは 天来でなきゃダメ。
隷属から自由に解放されたければ
依存と温情から抜け出さないと。
いつまでも幼い子どもじゃないんだ。
大人のたしなみじゃないが、思い切り
高望みして、大きな希望を抱くんだよ!
どんな暗い闇の世でも 光は見えてくる。
君の心の中に 希望の火が消えない限り」
夕暮れ時になって、少しだけ肌寒くなる。
若い青年は、いつの間にか、使徒みたいに
熱く燃え上がる何かを内に秘めており、
たとえ今はまだ表に出してはいなくても、
私の目には見え、心がそれを感じていた。
将来的に有望な若者を見るのは、なんと
心が喜ばしく高鳴ることだろうか。
第3話
若い使徒
Young apostle
〜 完 〜
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